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フォレストスピリットマスコット飼育方法

フトアゴヒゲトカゲ(以下、フトアゴ)を飼育するための 1飼育環境2食事3温浴4健康管理 の4点について、簡単に記載しています。

フォレストスピリットマスコット飼育環境について

■ケージについて

本来であれば900x450x450(mm)前後の大きさであれば、比較的スペースを確保しやすく、フトアゴもある程度 動き回る事が出来ます。

しかし、私共では設置場所の条件等も鑑み600x450x450(mm)を推奨いたします。

■ケージ内のレイアウトについて

昼行性のフトアゴは、自然化ではバスキングすることにより、日中体を温めたり、紫外線を浴びるので、飼育する際、紫外線ライト、バスキングランプ、保温器具などが必要です。

消化不良や、くる病防止のため、適切な器具を選びましょう。

くる病(骨軟化症)とは

カルシウム・リンが骨基質に十分に沈着せず、骨塩(セメント部分)が不十分な弱い骨ができてしまう状態です。

■紫外線ランプ/ライト

太陽光に含まれるUVBを放射するランプです。

UVBを浴びることにより、ビタミンD3の活動が活発になり、カルシウムが骨に定着しやすくなります。紫外線ランプ自体のUVB照射量はそれほど高くないので、曇りの日でも10分程度日光浴をする方が効果的です。

紫外線ランプ1

紫外線ランプだけでもカルシウムとビタミンD3をしつかり摂っていれば、問題ないと思いますが、なるべくUVB照射量の高いものを選ぶようにしてください。
また、紫外線ランプは一定期間を過ぎるとUVBの照射量が減少してしまうため、ランプが切れるまで使用するのではなく、できれば半年、長くても1年を目安に買い換える必要があります。
私どもではUBテスターを利用照射量を常に測定し交換をしています。

UVBテスター
■バスキングランプ

フトアゴは変温動物なので、体を活性化させたり、食後にお腹を温めて消化を促したりするために使用します。バスキングランプは、バスキング用の石や木材にランプを放射させて使用します。バスキングスポット周辺の温度は、 「40度前後」が望ましいです。
真夏はケージ内温度が上がりやすいため、ワット数を下げるなどして対応してください。
私共では、40W~100Wを季節やケージごとに付け替えています。

バスキングランプ
■保温器具

暖突などの温度を上げるための器具です。後述するサーモスタットと併用することが多いです

保温器具
■サーモスタット

1~3を管理する機器です。日中は全てのランプが稼働し、夜間は保温器具以外が停止します。また、日中・夜間で保温器具の上限温度を設定することが出来るものもあります(出来ないタイプもあるので注意)

例)日中の保温器具の上限温度を28度に設定した場合

ケージ内の温度が28度以下→保温器具が稼働

ケージ内の温度が28度以上→保温器具が停止

この機器がないと手動で管理することが増えてしまうので、導入をお勧めします。

サーモスタット

日中・夜間の紫外線ライト、バスキングランプの自動オン/オフが出来るタイプは、サーモスタット側のコンセント差し込み口が1口である場合がほとんどです。


紫外線ランプとバスキングランプを接続する必要があるため、2口以上の電源タップの準備を忘れないようにしてください。
設定方法については、説明をよく読み、実運用する前に該当するランプ等が決まった時間に自動オン/オフすることを確認してください。

例) 18:00ランプ自動点灯、18:10ランプ自動消灯 のような形でテストを実施する。

■ランプをつけるソケット

意外と忘れがちですが、ランプ用のソケットも必要となります。
ランプの必要数分、ソケットを準備してください。
ソケットには接続するランプのワット数の上限があります。上限を超えても使える場合がありますが、過電流による火災の危険性、電球についている金属の剥離による生体の火傷や誤飲の可能性があります。購入前にワット数の上限をよく確認してください。

■床材

ペットシーツ、デザートサンド、ウッドチップ等たくさんの種類があります。細かい目のデザートサンドのようなものを使用する場合、排泄物の掃除がしやすい、見栄えが良い、という利点はあります。
私共ではヨーロッパから直輸入したガーネットサンドを利用しています。

ガーネットサンド

フォレストスピリットマスコット食事について

■フトアゴの食性について

フトアゴは虫食寄りの雑食です。野生では虫や草花、小さい動物を食べることもあります。品種改良が進んできた今でも腸は短く、虫食寄りとなっています。
人工飼育下では、コオロギなどが多いです。

■給餌について(主にベビー~ヤングアダルト)

ベビー~ヤングアダルトまでは、食べたいだけ食べさせてよいと考えています。
但し、虫だけではなく、野菜も食べさせる練習をさせておいた方が後々楽になります。
たくさん食べる子ですと、半年ぐらいで縦の成長がゆるやかになり、体重が増える割合が多くなります。このような状態になりましたら、アダルトと同じように食事制限を始める必要があります。

■給餌について(主にアダルト)

虫食がメインではありますが、野生化では毎日虫が食べられる訳でもなく、運動量は人工飼育下に比べて遥かに多いと思います。ですので、虫を中心に給餌する方がよいのですが、その場合、給餌の回数や量に気をつけ、1週間に 1回ずつ体重を計り、適切な量を見極める必要があります。こまめな水分補給をすることも重要です。そのため、野菜も混ぜていくと良いでしょう。

※理想の体重こ関しては、爬虫類を診てもらえる病院で健康診断してご確認ください
私共でも体型の写真、体重、普段の運動量、1週間の食事のメニューなどがわかれ ば、ある程度の判断は出来ます

「アダルトになったら野菜中心に切り替える」、というケースが多いですが、野菜もバランス良く、適量でなければ太ってしまいます。野菜だけでは食べてくれなくなってしまう子もいるので、虫も混ぜてあげる必要があります。野菜は栄養を摂るだけでなく、水分補給にもなります。

■給餌のサイクルについて(主にアダルト)

給餌のサイクルは、1週間で、

  • 虫を数匹与える日を1日
  • バランスの良い野菜を与える日を2, 3日
  • 水分は毎日しっかり摂る

これらを1週間ごとに体重管理しながら試していき、体重が増減しない量を見つけることが大切です。これに加え、※水分不足で口の中が粘ついていないか、運動の量が低下していないか、などを確認し、個々にあった食事をさせる必要があります。

※水分については非常に重要で、口内が粘ついた状態が続くと、照下障害などを引き起こす可能性があります。

自分で水受けから飲まない子は、

  • ・温浴で飲むか試してみる
  • ・スポイトなどで鼻先に一滴ずつ水を垂らしてみる
    何度か試すと飲み始める子もいます
  • ・レタスなどローカロリーな野菜に霧吹きなどして与える

乾燥している季節は特に気を遣ってください。

最初は面倒に感じますが、1ヶ月ほど続けると給餌の間隔が分かってきますので、長生きさせてあげるためにしばらく手をかけていただければと思います。

■虫類の給餌について

私共ではヨーロッパイエコオロギの給餌を推奨しています。
適度な蛋白質、脂質、カルシウムを与えるのに適しているからです。 ワーム系は脂質が高く、太らせるのには良いのですが、消化しづらく、ベビーやヤングアダルト(アダルトでも)だと吐き戻してしまうことや、全く消化されずに排泄されることも多々あるので、お勧めしません。

コオロギ
■野菜の給餌について

野菜は色々な種類(科の違うもの)をバランス良く与える必要があります(例えば、以下の野菜を3種類ずつ週2回のペースであげていくなど)。

野菜の量については個体差があるため、毎日全部食べ、体重が増えないようであれば量は変えず、残してしまうようであれば量を減らすなど、各個体に合わせて適切な量を見極めてください。

かぼちゃ、にんじん、アスパラ、サラダ菜、パプリカ、オクラ、モロヘイヤ、サンチュ、カブの葉、レタス類 (水分補給用)、たんぽぽ、食用菊など

※モロヘイヤの種子や茎には毒性があると言われていますが、食用で販売されているものは、茎や種子が含まれていないので問題ありません

例) サニーレタス、カボチャ、にんじんにカルシウムを振りかけたもの

野菜の給餌について

フトアゴがよく食べている野菜といえば、「小松菜、チンゲンサイ」などがあげられますが、これらの野菜は食べさせすぎると太りやすくなってしまいます。
上記の野菜はアブラナ科に属する野菜で、食べ過ぎると「ゴイトロゲン」という物質が甲状腺に作用し、太りやすくなったり、フトアゴ自体の動きが悪くなる可能性があります。

アブラナ科だけではなく、

豆苗、大豆、落花生、いちご、梨、桃、ほうれん草、タケノコ、サツマイモ

などにも含まれているので与えすぎには注意してください。

栄養価は非常に高いので、週1回あげるぐらいであれば全く問題ありません。成長期のベビーやヤングアダルトであれば、もう少し高い頻度で食べていても問題ないと思います。

但し、どの野菜も偏って与えてしまうと何らかの弊害が出る可能性があるので、なるべく科の違う野菜を与えるようにしてください。

ネギやニンニクなど刺激のあるものは絶対に与えないでください。
死に至る可能性があります。

前述しましたが、糖度の高いもの、※フルーツも極力与えない方がよいです。
意外とすぐに糖尿病になってしまうので、気をつけてください。

過去に見た例として、週に2回レーズンをあげていた子が、1ヶ月で末期の※糖尿病になってしまい、気付いてから3、4日で亡くなってしまいました。

※糖尿病は末期になると明らかに歩き方がおかしくなります(後脚を引きずる等)
そうなってしまうと助かる可能性は非常に低いです。

フォレストスピリットマスコット温浴について

温浴をさせる理由は様々で、人によって見解が違います。本項は、当店の見解であるため、記載されている温浴方法が絶対では無いことをご理解ください。

■温浴の目的

以下のような場合、温浴をさせています。

  • ・身体、総排泄腔の周辺が汚れている
  • ・水分が不足している(と思われる場合)

基本的には、必要な時のみ温浴させています。

身体、総排泄腔周りの汚れは、細菌感染に繋がると考えています。
また、多頭飼育である場合、1匹だけでも細菌を持っている子がいると、他の子への感染率が高まります(コクシジウムや寄生虫などは、宿主の排泄物を祇めたり、総排泄腔に付着することで感染します)。
汚れは1分程度温浴させた後、毛先の細い歯ブラシなどで軽くこするだけで落ちます。

水分不足の子は口の中が粘ついたり、目の周りが落ちくぼんだりします。
このような状態は、水分不足の可能性が非常に高いです。温浴をすることで確実に水を飲むわけではありませんが、水を飲む練習をすることは出来ます。
例えば、鼻先にスポイトで水を垂らし続けたり、水を指で動かすことで「水がある」ということを認識させるなどします。全く飲んでくれない子は、野菜などから水分を摂取してください。

温浴について
■温浴のさせ方

温浴をさせる場合、以下の点に気をつけてください。

  • ・温浴させるための場所を作る
  • ・お湯の温度は、35度~40度程度にする
  • ・お湯は浅めにする

お湯の温度は、35 度~40 度ぐらいが望ましいです。
手を入れてみて、少し冷めてきたからお湯を変える、継ぎ足す、温浴をやめる、などの判断をしてください。
また体が急激に冷えるといけないので、温浴後はきちんと全身を拭いてあげてください。

お湯はあまり深くしないでください。
まれに温浴好きで、頭から潜って遊ぶような子もいますが、四肢を使って全力で泳ぎ始めるような子は温浴が好きではない、というより恐怖でしかない場合がほとんどです。その為、お腹のちょっと上ぐらいまでお湯を張ればです。
温浴好きの子は、お湯を深く張っていますが、気分によっては泳がずに浮かんでいるだけになることもあるため、様子を見ながらお湯の深さを変えたり、温浴を切り上げたりします。

便秘がちな子を長めに温浴させ、排泄を促す場合もありますが、そのような子は1度病院で診てもらい、別の方法で排泄を促す方がよいと考えています。
具体的には、子供用の綿棒などで肛門を剌激し、排泄を促すというものです。毎回実施してしまうと、その時しか排泄しなくなる可能性があるので、出さざるを得ない場合のみ実施してください

フォレストスピリットマスコット健康管理について

■正しい生活サイクルを作る

フトアゴも人間と同じように、「規則正しい生活」が大事です。夜遅くまで起きていると、日中ウトウトすることが多かったり、疲れている様子が見られることもあります。
疲れが溜まると、免疫力が落ちる可能性も考えられます。サーモスタットでランプの点灯、消灯の時間を設定したり、カーテンの開け閉めで習慣づけるとよいでしょう。

■体重管理に気をつける

食事の頻度などについては前述したとおりですが、フトアゴはよく食べる子がほとんどなので、たくさん餌を与えるとその分食べてしまい、肥満になることも多いです。肥満が進むと、お腹の中の脂肪が内臓を持ち上げ、肺などが圧迫されるため、運動量が落ち、口を開けることが多くなります。
肥満気味だと感じた時は、爬虫類を診られる病院で健康診断をすることをお勧めします。

■温度管理に気をつける

ケージ内の温度は、28度~30度、バスキングスポットの温度は40度前後が望ましいです。
湿度については、30~40%で問題ありません。

但し、ケージ内でも暖かい場所と少し涼しい場所を作ってあげるようにしてください。
バスキングスポット周辺は暖かく、その逆の位置には温度が高くならないように設置するとよいかと思います。

ケージ内の温度が低い場合、運動量が落ちたり、食欲が落ちたりすることがあります。
ケージ内の温度が高い場合、水分不足や、体調を崩す原因となります。
バスキングスポットの温度が低い場合、食べ物が消化しきれない場合があるため、なるべく40度前後を保つようにしてください。

フトアゴは暑さに強いと思われがちですが、ケージ内の温度が高い日が続くと体調を崩してしまう子もいるので、気をつけください。

■カルシウムを摂取させる

健康な骨を維持するためにカルシウムは必須です。
爬虫類用のカルシウム剤(ビタミンD3が含まれているものがよい)を野菜に少しだけ振りかけたり、虫にまぶしたりして与えてください。 カルシウムが足りないと、くる病などの病気になる可能性があります。
過剰摂取させる必要はありませんが、週2,3回は与えるようにしてください。

■日光浴をさせる

「紫外線ランプ」のところにも記載しましたが、紫外線を浴びることでカルシウムが骨に定着しやすくなります。
紫外線ランプだけでも問題ありませんが、外で日光浴を10分程度させるだけで、ケージ内のUVBを1日浴びるより遥かに効果があります。

たまに日光浴をさせてあげると良いかと思います。
但し、非常に暑い日は日光浴を避けた方が良いです。
短時間でも、熱中症で亡くなってしまう場合があります。

■普段と様子が違うと感じたらすぐに病院へ

フトアゴに限らず、爬虫類は病気や痛みを隠そうとします。
様子を見ていたら手遅れになった、という例もよくあります。毎日観察し、ふれ合いをすることで(嫌がる子は無理にさせないでください)、病気や怪我をみつけやすくなります。
元気に過ごしていくためにも、毎日少しの時間でいいので様子をみてあげてください。
もし、いつもと違うと感じたり、様子がおかしいと感じたら、迷わず病院へいきましょう。

また、病気になってから病院を探すというのは緊急時である場合、致命的ですので、健康なうちに爬虫類を診られる病院を探しておいてください。

フトアゴをお迎えしたら、「健康診断」、「便検査」を行うことをお勧めします。
寄生虫を持っている可能性や、先天的な病気が見つかる事があります。